残業代(割増賃金)の計算方法と間違えやすいポイント

公開日: 2026年9月6日 / 最終更新日: 2026年9月6日

残業代の計算は、割増率の組み合わせが多く、給与計算の担当者が間違えやすいポイントの一つです。この記事では、残業代(割増賃金)の基本計算式から、時間外・休日・深夜が重なった場合の計算方法、月60時間超の扱い、実務でありがちな計算ミスまで、具体例を交えて解説します。

結論を3行で

  • 残業代は「1時間あたりの賃金 × 割増率 × 残業時間」で計算する
  • 割増率は時間外25%・休日35%・深夜+25%が基本で、重複する場合は合算する
  • 月60時間を超える時間外労働は50%以上の割増率になる(中小企業も適用済み)

残業代の基本計算式

残業代は「1時間あたりの賃金」を正しく出すことが出発点です。残業代の基本計算式は次のとおりです。

残業代 = 1時間あたりの賃金 × 割増率 × 残業時間数

「1時間あたりの賃金」は、月給制の場合、月給(諸手当を含む)を1か月平均所定労働時間で割って算出します。1か月平均所定労働時間は「(365日 − 年間休日日数) × 1日の所定労働時間 ÷ 12か月」で求めるのが一般的です(根拠: 労働基準法37条・e-Gov法令検索)。

ただし、計算のもとになる賃金(算定基礎賃金)には、次の手当は労働基準法上、原則として含めません(除外賃金)。

  • 家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)

これらは名称ではなく実態で判断されます。例えば「住宅手当」という名称でも、住宅の有無や家賃額に関係なく一律定額で支給している場合は除外対象にならない、といった判断が必要になる点に注意してください。

割増率の種類と早見表

割増率は「時間外・休日・深夜」の組み合わせで決まります。残業代の割増率は、労働の種類によって次のように定められています。

労働の種類 割増率 補足
時間外労働(法定労働時間超) 25%以上 1日8時間・週40時間超の部分
時間外労働(月60時間超の部分) 50%以上 詳細は次章
休日労働(法定休日) 35%以上 法定休日(週1日)の労働のみ対象。法定外休日の労働は時間外労働として扱う
深夜労働(22時〜翌5時) 25%以上 時間外・休日労働と重複する場合は合算
時間外+深夜が重複 50%以上 25%+25%
休日+深夜が重複 60%以上 35%+25%

なお、休日労働は法定休日(週1日、または4週4日)の労働にのみ「休日労働」の割増率(35%以上)が適用されます。会社が定める法定外休日(いわゆる「土日休みのうち片方」など)に働かせた場合は、休日労働ではなく通常の時間外労働として扱い、25%以上の割増率(週の労働時間次第で発生)で計算します。

月60時間超の残業代

月60時間を超える残業には50%以上の割増率が必要です。1か月の時間外労働が60時間を超えた場合、超えた部分については50%以上の割増賃金を支払う必要があります(60時間以下の部分は通常どおり25%以上)。この「月60時間」のカウントには、法定休日労働は含まれません(時間外労働のみでカウントします)。深夜労働と重複する場合は、深夜割増(25%以上)と合算し75%以上になります。

注意

この50%以上の割増率は、以前は大企業にのみ義務付けられていましたが、2023年4月からは企業規模にかかわらず全ての企業に適用されています。中小企業だから対象外、という猶予はすでに終了している点に注意してください。

具体的な計算例

実際の数字で計算の流れを確認してみましょう。月給30万円(諸手当なし、除外賃金なし)、1か月平均所定労働時間160時間の従業員が、ある月に法定時間外労働を20時間行ったケースで計算してみます。

  • 1時間あたりの賃金: 300,000円 ÷ 160時間 = 1,875円
  • 時間外労働の割増賃金(月60時間以下、割増率25%): 1,875円 × 1.25 × 20時間 = 46,875円

同じ条件で、時間外労働が月70時間になった場合は、60時間までの部分と60時間を超える部分を分けて計算します。

  • 60時間までの部分(割増率25%): 1,875円 × 1.25 × 60時間 = 140,625円
  • 60時間を超える10時間分(割増率50%): 1,875円 × 1.5 × 10時間 = 28,125円
  • 合計: 140,625円 + 28,125円 = 168,750円

このように、月60時間を境に割増率が変わる場合は、1本の式でまとめて計算せず、60時間以下の部分と超えた部分を分けて計算するのが確実です。さらに、賞与から社会保険料が控除されるのと同様、残業代も所得税・社会保険料の計算対象になるため、給与計算ソフトに反映する際は課税・社会保険の対象区分も忘れずに確認してください。

固定残業代(みなし残業)がある場合の注意点

固定残業代を採用している場合は、みなし時間を超えた分の別途支払いが必要です。基本給や諸手当に、あらかじめ一定時間分の残業代を組み込んで支給する「固定残業代(みなし残業代)」を採用している会社もあります。固定残業代を導入している場合でも、実際の残業時間がみなし時間を超えた場合は、その超過分の残業代を別途計算して支払う必要があります。固定残業代を払っているからといって、それ以上の残業代の支払いを免れるわけではありません。固定残業代の適法な設計・運用については、別記事で詳しく解説予定です。

計算を間違えやすいケース

端数処理や相殺のルールを誤ると未払い残業代につながります。残業代の計算では、次のようなケースで間違いが起こりやすいため注意が必要です。

  • 遅刻・早退との相殺: ある日の遅刻・早退時間を、別の日の残業時間と相殺して残業代を減らす計算は認められません。残業代は日ごと・月ごとに正しく計算し、遅刻・早退による賃金控除は別の計算として扱う必要があります。
  • 端数処理: 1分単位で計算するのが原則です。ただし、1か月における時間外労働等の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に限り、30分未満切り捨て・30分以上切り上げにする処理は行政解釈上認められています。日々の残業時間を切り捨てる運用は原則として認められません。
  • 除外賃金の誤り: 前述の除外賃金(家族手当・通勤手当・住宅手当等)を正しく判定できておらず、算定基礎賃金を誤って低く計算してしまうケース
  • 管理監督者の扱い: 役職者であっても、労働基準法上の「管理監督者」に該当しない限り、時間外・休日労働の割増賃金の支払い義務は発生します(深夜割増は管理監督者にも適用される点にも注意)

よくある質問

Q. 深夜に及ぶ残業の場合、割増率はどう計算しますか?
A. 時間外労働と深夜労働(22時〜翌5時)が重なる時間帯は、時間外の25%以上と深夜の25%以上を合算し、50%以上の割増率で計算します。時間外労働が22時をまたいで深夜に入った場合、22時以降の時間は50%以上の割増賃金が必要です。
Q. 年俸制や日給制でも残業代の考え方は同じですか?
A. はい、基本的な考え方は同じです。年俸制であっても、年俸に固定残業代として一定時間分の残業代が明確に組み込まれている場合を除き、別途、実際の残業時間に応じた割増賃金を計算して支払う必要があります。日給制の場合は、日給を1日の所定労働時間で割って1時間あたりの賃金を算出します。

まとめ

  • 残業代は「1時間あたりの賃金 × 割増率 × 残業時間」で計算し、除外賃金の扱いに注意する
  • 割増率は時間外25%・休日35%・深夜+25%が基本で、重複時は合算する
  • 月60時間超の時間外労働は50%以上(中小企業も適用済み)、遅刻・早退との相殺や端数処理の誤りは未払い残業代の原因になりやすい