社会保険の加入条件とは?対象者・適用事業所をわかりやすく解説

公開日: 2026年9月6日 / 最終更新日: 2026年9月6日

「うちは社会保険に加入させないといけないの?」「このパートさんは対象になる?」——採用や雇用形態の見直しのたびに、こうした疑問に直面する経営者・労務担当者の方は多いのではないでしょうか。社会保険の加入条件は、会社側の要件と従業員側の要件の両方を満たして初めて判断できる、意外とわかりにくい仕組みです。この記事では、加入義務が生じる会社・従業員の条件を整理したうえで、2026年10月の法改正で何が変わるのかまで解説します。

結論を3行で

  • 社会保険(健康保険・厚生年金保険)は、法人なら従業員1人からほぼ強制加入。個人事業所も業種・人数によっては強制加入になります。
  • 従業員側は「正社員の4分の3以上働くかどうか」が基本の分かれ目。4分の3未満でも、一定規模の企業では週20時間以上等の条件で加入対象になります(いわゆる「106万円の壁」)。
  • 2026年10月からはこの106万円の壁のうち「月8.8万円以上」という賃金要件が撤廃され、加入対象がさらに広がります。

社会保険とは?まず全体像を押さえる

「社会保険」という言葉は、狭い意味では健康保険法に基づく健康保険と厚生年金保険法に基づく厚生年金保険の2つを指します(労災保険・雇用保険は「労働保険」として別枠で扱われるのが一般的です)。健康保険は病気・けが・出産時の給付、厚生年金保険は老後の年金に上乗せされる給付を担う制度で、加入すると保険料は会社と従業員が折半して負担します。

加入するかどうかは、「①会社(事業所)がそもそも社会保険の適用対象か」「②その従業員が被保険者の要件を満たすか」という2段階で判断します。次の章から順に見ていきます。

会社(事業所)側の加入条件

まず会社側の条件です。ここを満たしていない事業所では、そもそも従業員個人の要件を検討する前提がありません。

  • 法人事業所: 代表者1人だけの会社であっても、常時従業員を使用していれば強制加入(適用事業所)になります。「規模が小さいから対象外」という考え方は法人には当てはまりません。
  • 個人事業所: 常時5人以上を使用し、かつ法律で定められた業種(製造業・卸売業・小売業・士業など17業種)に該当する場合は強制加入です。逆に、5人未満の個人事業所や、農業・飲食業・宿泊業など17業種に含まれない個人事業所は、強制加入の対象外(任意適用)となります。

注意

個人事業所であっても、任意適用の手続きをとれば従業員を社会保険に加入させることは可能です。また、士業(社会保険労務士・税理士など)は2022年の法改正で強制適用業種に追加されているため、以前は対象外だった士業の個人事務所も要件の再確認が必要です。

従業員側の加入条件①:正社員など(4分の3基準)

会社が適用事業所であることを前提に、次は従業員個人の要件です。基本となるのが「4分の3基準」と呼ばれるルールで、1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が、同じ職場の通常の労働者(いわゆる正社員)のおおむね4分の3以上であれば、雇用形態(正社員・契約社員・パートなど呼び方)にかかわらず社会保険の加入対象になります。

例えば正社員の所定労働時間が週40時間の会社であれば、週30時間以上働く従業員は基本的に加入対象です。この基準を満たす場合、パートやアルバイトという呼称であっても、次章の特例を検討するまでもなく加入義務が生じます。

従業員側の加入条件②:パート・アルバイト(いわゆる「106万円の壁」)

4分の3基準を満たさない、より短時間の働き方をしている従業員でも、一定の条件をすべて満たすと社会保険の加入対象になります。これが「106万円の壁」と呼ばれてきた仕組みで、2026年8月時点(2026年10月改正前)では次の4要件すべてに該当する場合に加入対象です。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上
  2. 月額賃金が8.8万円以上(年収換算でおよそ106万円)
  3. 雇用期間が2か月を超えて見込まれる
  4. 学生でないこと(休学中・夜間学生等は対象になる場合があります)

ただし、この4要件が適用されるのは「特定適用事業所」に勤務している場合に限られます。特定適用事業所とは、厚生年金保険の被保険者数が一定規模を超える企業のことで、対象範囲は段階的に拡大されてきました。2026年8月時点の基準は「51人以上」です(カウント対象は全従業員数ではなく厚生年金保険の被保険者数)。

注意

「106万円の壁」と混同されやすいのが、配偶者の扶養に入れるかどうかを判定する「130万円の壁」です。106万円の壁は「勤務先で社会保険に加入するかどうか」、130万円の壁は「家族の扶養に入れるかどうか」を判定する別の制度です。この2つの違いは記事を改めて詳しく整理します。

2026年10月から加入条件はどう変わる?

2026年10月の年金制度改正法の施行により、前章の4要件のうち「月額賃金8.8万円以上」という賃金要件が撤廃されます。残る3要件(週20時間以上・雇用期間2か月超見込み・学生でないこと)は維持されるため、実質的には賃金額ではなく「週20時間働くかどうか」だけで加入の可否が決まる形に変わります。最低賃金の上昇により、時給次第では週20時間働けば自然と月8.8万円を超えるケースが増えており、賃金要件が実態に合わなくなってきたことが背景にあります。

また、特定適用事業所の企業規模要件(2026年8月時点で被保険者数51人以上)についても、2027年10月以降に段階的な緩和・撤廃が予定されており、将来的にはほぼすべての企業がこの規模要件の対象になる見通しです。最新の対象範囲・スケジュールは、厚生労働省の社会保険適用拡大特設サイトで随時公表されています。この改正の詳しい影響(対象になるパート従業員の見分け方、企業側の対応策)は、別記事でさらに詳しく解説します。

よくある質問

Q. パート・アルバイトは何時間働くと社会保険に入るのですか?
A. 正社員の4分の3以上働く場合は加入対象です。4分の3未満でも、勤務先が特定適用事業所(2026年8月時点で厚生年金保険の被保険者数51人以上)であれば、週20時間以上等の要件を満たすことで加入対象になります。
Q. 厚生年金保険の被保険者数が50人以下の会社なら、パートは社会保険に加入させなくてよいのですか?
A. 4分の3基準を満たさない短時間労働者については、特定適用事業所の要件(2026年8月時点で被保険者数51人以上)に該当しない限り、加入させる法的義務はありません。ただし労使合意があれば任意で加入させることも可能です。
Q. 個人事業主本人は社会保険(厚生年金保険・健康保険)に加入できますか?
A. 個人事業主本人は、従業員という立場ではないため厚生年金保険・健康保険(被用者保険)の対象にはならず、国民年金・国民健康保険への加入が基本になります。ただし、法人化して自身が役員(代表者)になれば、法人の社会保険に加入することができます。

まとめ

  • 社会保険は「会社が適用事業所かどうか」と「従業員が被保険者の要件を満たすかどうか」の2段階で加入の可否が決まります。
  • 正社員は4分の3基準、短時間労働者は特定適用事業所での4要件(2026年10月からは3要件)で判断します。
  • 2026年10月の改正で賃金要件が撤廃され、対象者は今後さらに拡大していく見込みです。