残業代と36協定の基本ルールをまとめて解説

公開日: 2026年9月6日 / 最終更新日: 2026年9月6日

「残業代はいくら払えばいいのか」「36協定を結んでいないと残業させてはいけないと聞いたが本当か」——中小企業の経営者や労務担当者からよく聞かれる疑問です。この記事では、残業代の基本ルール、36協定の必要性、残業時間の上限規制について、まず全体像を整理します。それぞれの詳しい計算方法・手続きは、記事内で紹介する深掘り記事で解説します。

結論を3行で

  • 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える残業には、原則25%以上の割増賃金が必要(月60時間を超えた分は50%以上)
  • 残業させるには、事前に36協定を結び、労働基準監督署へ届け出ることが法律上の前提条件
  • 残業時間には上限があり、原則月45時間・年360時間まで(特別条項付きでも上限あり)

そもそも「残業(時間外労働)」とは何か

「残業」には法律上、法定内残業と法定外残業の2種類があります。労働基準法では、1日8時間・1週40時間を「法定労働時間」として定めています(労働基準法32条)。この法定労働時間を超えた労働が、いわゆる「残業(時間外労働)」です。

ただし、就業規則上の所定労働時間(例: 1日7時間)が法定労働時間より短い会社では、所定労働時間を超えても法定労働時間内に収まる残業(法定内残業)が発生します。法定内残業には法律上の割増賃金の義務はなく、通常の賃金を支払えば足ります(会社独自のルールで割増を付ける分には問題ありません)。一方、法定労働時間そのものを超える残業(法定外残業)には、この後説明する割増賃金の支払いが必要になります。

残業代(割増賃金)の基本ルール

残業代は原則25%増、深夜・休日・月60時間超で割増率が変わります。法定外残業をさせた場合、通常の賃金に加えて割増賃金を支払う必要があります。割増率は労働の種類によって異なります。

  • 時間外労働(法定労働時間超): 25%以上
  • 休日労働(法定休日の労働): 35%以上
  • 深夜労働(22時〜翌5時): 25%以上(時間外労働と重複する場合は合算)
  • 時間外労働が月60時間を超えた部分: 50%以上

計算の基本式は「1時間あたりの賃金 × 割増率 × 残業時間数」です。1時間あたりの賃金の算出方法や、深夜労働との重複時の計算例など、具体的な計算方法は下記の深掘り記事で詳しく解説しています(根拠: 労働基準法37条・e-Gov法令検索)。

注意

月60時間超の残業に対する50%以上の割増率は、以前は大企業のみの適用でしたが、2023年4月からは中小企業にも適用されています。現在は企業規模を問わず全ての企業が対象です。

36協定とは何か・なぜ必要か

残業させるには、36協定の締結・届出が法律上の前提条件です。労働基準法36条に基づき、法定労働時間を超えて働かせる、または法定休日に働かせるには、あらかじめ労使間で「時間外労働・休日労働に関する協定」(通称36協定)を書面で締結し、労働基準監督署へ届け出ておく必要があります。これが36協定という名前の由来です。

36協定を締結・届出せずに法定時間を超える残業をさせた場合、企業側に労働基準法違反が成立し、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象となり得ます。残業代をきちんと支払っていたとしても、36協定という「残業をさせてよい根拠」がなければ違法になる点に注意が必要です。

36協定には、通常の上限内で運用する一般的な形式のほか、臨時的に特別な事情がある場合に上限を拡張できる「特別条項付き36協定」もあります。締結の手続き・様式・提出期限・特別条項の詳しい内容は、下記の深掘り記事のほか、厚生労働省「スタートアップ労働条件:時間外労働の上限について」でも確認できます。

残業時間の上限規制の概要

残業時間には上限があり、超えると罰則の対象になります。2019年4月(中小企業は2020年4月)に施行された働き方改革関連法により、残業時間の上限は、それまでの行政指導レベルの目安から、罰則付きの法規制へと格上げされました。

  • 原則: 月45時間・年360時間まで
  • 特別条項付き36協定を結んでいる場合でも: 年720時間以内/単月100時間未満(休日労働を含む)/複数月平均80時間以内(2〜6か月平均、休日労働を含む)/月45時間を超えられるのは年6回まで

これらの上限を超えて労働させた場合は、36協定の有無にかかわらず労働基準法違反となり、罰則の対象になります。上限規制の詳しい内容、猶予期間が終了した業種の取り扱い、罰則については下記の深掘り記事のほか、厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」でも解説されています。

中小企業が今すぐ確認すべきチェックポイント

まずは自社の36協定と残業実態を照らし合わせて確認しましょう。ここまでの内容を踏まえ、中小企業の経営者・労務担当者がまず確認すべきポイントは次のとおりです。

  • 36協定を締結・届出しているか、有効期限が切れていないか
  • 届出済みの36協定の内容(通常の上限か、特別条項付きか)と、実際の残業実態が一致しているか
  • 月60時間を超える残業代を、正しく50%以上の割増率で計算・支払いできているか
  • 特別条項を使う場合でも、年720時間・単月100時間未満などの上限を超えていないか

よくある質問

Q. パート・アルバイトにも36協定は必要ですか?
A. 必要です。36協定は正社員に限らず、その事業場で働くパート・アルバイトを含む全ての労働者の残業に適用されます。36協定の届出自体は事業場単位で行うため、雇用形態ごとに別々の協定を結ぶ必要はありません。
Q. 残業代を払っていれば36協定は不要ですか?
A. いいえ、不要にはなりません。残業代の支払いと36協定の締結・届出は別の義務です。残業代を適正に支払っていても、36協定を結ばずに法定時間を超える残業をさせれば労働基準法違反になります。

まとめ

  • 残業代は原則25%以上の割増賃金(月60時間超の部分は50%以上)
  • 残業させるには36協定の締結・届出が必須で、怠ると罰則の対象になる
  • 残業時間には上限(原則月45時間・年360時間、特別条項でも上限あり)があり、超えると罰則の対象になる