36協定の締結・届出の実務(様式・特別条項・提出期限)

公開日: 2026年9月6日 / 最終更新日: 2026年9月6日

「36協定は結んでいるはずだが、手続きが合っているか自信がない」という声は少なくありません。この記事では、36協定を締結・届出するまでの手続きの流れ、届出様式、提出期限・有効期間、特別条項付き36協定の仕組みについて、実務目線で解説します。

結論を3行で

  • 36協定は「労働者代表の選出→締結→届出→周知」の順で手続きし、労働基準監督署への届出が必要
  • 様式は通常のもの(様式第9号)と特別条項付き(様式第9号の2)があり、電子申請にも対応している
  • 有効期間の定めに法律上の制限はないが実務上1年が一般的で、満了前に都度更新の手続きが必要

36協定の締結相手・手続きの流れ

36協定の締結相手は「労働者の過半数代表」です。36協定は、事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合と、ない場合は労働者の過半数を代表する者と締結します(根拠: 労働基準法36条・e-Gov法令検索)。労働者代表になれるのは、労働基準法上の「管理監督者」に該当しない労働者に限られます。管理監督者を労働者代表として選出した協定は無効となるため、選出対象者の範囲にも注意が必要です。手続きの流れは次のとおりです。

  • 労働者代表を選出する(過半数労働組合がなければ、投票・挙手等の民主的な方法で選出。使用者が指名することはできない)
  • 協定内容(延長できる時間、対象業務、有効期間等)を労使で話し合い、書面(協定書)を作成・締結する
  • 所定の届出様式に記入し、届出書を作成する
  • 事業場を管轄する労働基準監督署へ届け出る
  • 届出後、事業場内に掲示する・書面を交付する等の方法で労働者に周知する

注意

労働者代表の選出方法に不備がある(使用者が一方的に指名した、親睦会の代表を自動的に労働者代表とした等)場合、その36協定自体が無効と判断されるリスクがあります。選出方法・記録は必ず適正に残しておいてください。

届出の様式・記載事項

届出様式は通常版と特別条項付き版の2種類があります。36協定の届出には、厚生労働省が定める所定の様式を使用します。

  • 様式第9号: 通常の36協定(特別条項なし)
  • 様式第9号の2: 特別条項付き36協定

主な記載事項は、時間外労働をさせる必要のある具体的な事由、業務の種類、労働者数、延長できる時間(1日・1か月・1年それぞれ)、休日労働をさせる日数と始業・終業時刻、協定の有効期間、労働者代表の選出方法などです。2021年4月からは押印・署名が不要化されており、様式に労働者代表の氏名等が正しく記載されていれば足ります。また、e-Govを通じた電子申請にも対応しており、厚生労働省「スタートアップ労働条件:電子申請様式作成支援ツール」を使うと入力の補助を受けられます。

届け出た36協定届の控え(受付印付きの写し、または電子申請の受理通知)は、事業場に保管しておく必要があります。労働基準法109条は、労働関係に関する重要な書類の保存を使用者に義務付けており、36協定の協定書・届出の控えもこの対象に含まれます。保存期間は原則5年ですが、当分の間は経過措置として3年とされています。労働基準監督署の調査(臨検)の際に提示を求められることもあるため、紙・電子データいずれの場合も、すぐに取り出せる形で管理しておくと安心です。

提出期限・有効期間・更新のタイミング

有効期間が始まる前に届出を済ませておく必要があります。36協定の効力は、労働基準監督署への届出によって発生します(締結しただけでは足りません)。そのため、協定で定めた有効期間の始期までに届出を完了させておく必要があります。実務上は、有効期間の開始に十分間に合うよう、余裕をもって手続きを進めることが重要です。

有効期間の長さそのものに法律上の制限はありませんが、労働時間の実態に応じて協定内容を定期的に見直せるよう、1年間とするのが実務上一般的です。有効期間が満了する際に自動更新される仕組みはないため、満了前に改めて労働者代表との締結・届出の手続きをやり直す必要があります。更新のタイミングを見落とさないよう、社内でリマインドの仕組みを持っておくことをおすすめします。

特別条項付き36協定とは

特別条項は「臨時的な特別の事情」がある場合に限られます。通常の36協定で延長できる時間は、原則として月45時間・年360時間までです。これを超えて残業させる必要がある場合に、労使であらかじめ合意しておくことで上限を拡張できる仕組みが「特別条項付き36協定」です。

特別条項を使えるのは、「通常予見することのできない業務量の大幅な増加」など、あくまで臨時的な特別の事情がある場合に限られます。恒常的な人手不足や、毎月決まって発生する繁忙期のような予見できる事情は、特別条項の対象として認められません。特別条項付き36協定であっても、超えてはならない絶対的な上限(年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間以内等)が別途定められています。この上限の詳細は、以下の関連記事で解説しています。

特別条項を協定に盛り込む場合は、限度時間を超えて労働させる場合の手続き(労使間でどのような手順を踏んで発動するか)や、その際の健康福祉確保措置についても、あわせて協定に定めておく必要があります。健康福祉確保措置の具体例としては、医師による面接指導、深夜労働の回数制限、代償休日・特別休暇の付与、健康診断の実施などがあり、協定の中からいずれかを選んで定めるのが一般的です。詳しくは厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」でも紹介されています。

未締結・未届出のまま残業させた場合のリスク

未締結・未届出のまま残業させると、残業代を払っていても違法です。36協定を締結・届出しないまま法定労働時間を超える残業や法定休日の労働をさせた場合、労働基準法違反として6か月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象になり得ます。残業代を適正に支払っていたとしても、この違法性は解消されません。

労働基準監督署の調査(臨検)で36協定の未締結・未届出が発覚した場合、是正勧告を受けることが一般的です。是正に応じない、または悪質と判断された場合は、書類送検や企業名の公表に至るケースもあります。未払い残業代の問題とあわせて発覚することも多く、複数の労務トラブルが同時に表面化しやすい点にも注意が必要です。

よくある質問

Q. 本社でまとめて1本の36協定を届け出れば、全支店に適用されますか?
A. 原則として、36協定は事業場(支店・営業所等)ごとに届け出る必要があります。ただし、本社と各事業場の協定内容が同一である等の一定の要件を満たす場合は、本社が一括して届出できる特例が用意されています。該当するか不明な場合は管轄の労働基準監督署に確認してください。
Q. 有効期間中に延長時間の上限を変更したい場合はどうすればよいですか?
A. 協定で定めた範囲を超える変更(延長時間の上限を引き上げる等)は、原則として労働者代表との協定を結び直し、あらためて届出をする必要があります。有効期間中だからといって、届出済みの内容を一方的に変更することはできません。

まとめ

  • 36協定は「労働者代表の選出→締結→届出→周知」の順で手続きし、届出によって効力が発生する
  • 有効期間は実務上1年が一般的で、満了前の都度更新が必要(自動更新はない)
  • 特別条項は臨時的な特別の事情がある場合のみ使え、それでも超えられない絶対的な上限がある