公開日: 2026年9月6日 / 最終更新日: 2026年9月6日
「社員が有給休暇を全然使わない」「気づいたら年5日を下回りそう」——2019年4月の法改正により、会社には有給休暇が10日以上発生する従業員に年5日を確実に取得させる義務があります。これは労働者の希望を待つだけでは足りず、会社側が主体的に動く必要がある義務です。この記事では、対象者の範囲・会社が取るべき対応・違反した場合の罰則・実務でのつまずきやすいポイントを解説します(有給休暇の基本ルールは年次有給休暇は何日もらえる?付与日数の数え方と注意点を解説で解説しています)。
結論を3行で
- 年10日以上の有給休暇が発生する従業員全員(パート・アルバイト含む)に、基準日から1年以内に5日取得させる義務がある。
- 労働者が自分から申請しない場合、会社が本人の希望を聴いた上で時季を指定して取得させなければならない。
- 未達成の場合、労働基準監督署の是正勧告や罰則(30万円以下の罰金)の対象になり得る。
年5日取得義務の対象者
対象になるのは、年10日以上の有給休暇が付与されるすべての労働者です。正社員はもちろん、比例付与のパート・アルバイトであっても、週4日勤務で勤続3年6か月以上(10日発生)のように条件を満たせば対象になります(比例付与の日数は有給休暇の比例付与とは?パート・アルバイトの日数早見表を参照)。管理職(管理監督者)であっても、有給休暇の対象者である以上この義務の対象から外れません。
会社側の義務内容(時季指定義務)
会社は、対象となる労働者について、有給休暇の基準日(発生日)から1年以内に5日を取得させなければなりません。進め方は次のとおりです。
- 労働者が自分で5日以上を取得済みなら、会社が追加で指定する必要はない
- 5日に達していない場合、会社は労働者の意見を聴取し、それを尊重した上で取得時季を指定しなければならない
- 計画的付与制度(下記)で取得させた日数分は、5日から差し引ける
注意
「有給休暇の申請は労働者からするものだから、会社から声をかける必要はない」という理解は誤りです。年5日については、労働者からの申請を待つだけでなく、会社側から働きかける義務がある点が2019年の法改正の大きなポイントです。
計画的付与制度(計画年休)の活用
年5日の消化が進みにくい場合、計画的付与制度の活用が有効です。労使協定を締結することで、有給休暇のうち5日を超える部分について、会社があらかじめ取得日を計画的に割り振ることができます(本人が自由に使える5日分は残しておく必要があります)。夏季休暇・年末年始休暇の前後に組み込んだり、閑散期に一斉付与したりする運用が一般的です。
取得させなかった場合の罰則
年5日の取得義務(労働基準法(e-Gov法令検索)第39条第7項)に違反した場合、30万円以下の罰金の対象になり得ます。この罰則は労働者1人ごとに成立し得るため、対象者が多いほどリスクが大きくなる点に注意が必要です。罰則以前に、労働基準監督署の調査(臨検)で未達成が発覚すると是正勧告の対象になり、是正報告や再発防止の説明を求められるのが実務上の一般的な流れです。
有給休暇管理簿の作成・保存義務
会社には、対象労働者ごとに基準日・取得日数・取得時季を記載した「有給休暇管理簿」を作成する義務があります。保存期間は労働基準法施行規則第24条の7により原則5年間とされていますが、経過措置により当分の間は3年間の保存で足りるとされています。勤怠システムで有給の取得状況を管理できていれば、そのデータ出力を管理簿として扱っても構いません。管理簿がないと、そもそも5日を達成できているかどうかを会社自身が把握できず、未達成に気づかないまま基準日を超えてしまうという失敗につながりやすい点に注意しましょう。年5日取得義務の制度概要は、厚生労働省の年次有給休暇取得促進特設サイトでも公式に案内されています。
実務でつまずきやすいポイント
中小企業の労務実務では、次のようなケースで年5日の未達成が起きやすい傾向があります。あらかじめ想定しておくことで、基準日直前になって慌てる事態を避けられます。
- 基準日が従業員ごとにバラバラ: 入社日を基準にすると、社員ごとに基準日が異なり管理が煩雑になります。就業規則で基準日を4月1日等に統一する「斉一的取扱い」を導入すると、管理の手間が大きく減ります(ただしこの場合、法定より前倒しで付与する形になるため、日数が労働者に不利にならないよう調整が必要です)。
- 繁忙部署にしわ寄せが集まる: 特定の部署だけ取得率が低いまま基準日が近づき、駆け込みで一斉に有給消化が発生し現場が回らなくなるケースです。四半期ごとに部署別の取得状況を確認し、早めに声をかける運用にしておくと防ぎやすくなります。
- 派遣社員の扱い: 派遣社員の有給休暇は、派遣先ではなく派遣元(雇用主である派遣会社)に付与・取得義務があります。派遣先の会社が誤って自社の管理対象に含めてしまわないよう注意しましょう。
年5日の管理スケジュールの立て方(実務目安)
基準日から1年という期限ギリギリに慌てて指定すると、業務都合と重なって調整が難しくなりがちです。実務では、次のようなタイムラインで進めると無理がありません。
- 基準日から半年経過した時点で、取得日数が5日に届いていない従業員を一覧化する
- 該当者へ早めに取得希望の時季をヒアリングする(本人の意向を尊重するのが原則のため、まず希望を聴くステップを省略しない)
- 希望が出ない、あるいは繁忙で決めきれない従業員については、基準日の2〜3か月前を目安に会社側から具体的な日付を指定する
- 毎年同じ時期に取得率が落ち込む部署がある場合は、計画的付与制度の導入もあわせて検討する
よくある質問
Q. パート・アルバイトにも年5日取得義務は適用されますか?
Q. 基準日から1年経つ前に退職する人はどうなりますか?
Q. 労働者本人が「取得したくない」と言った場合はどうすればいいですか?
Q. 有給休暇管理簿は専用のシステムがないと作れませんか?
まとめ
- 年10日以上の有給休暇が発生する労働者全員に、年5日を確実に取得させる義務が会社側にある
- 労働者からの申請を待つだけでなく、会社側から時季を指定して取得させる、または計画的付与制度を活用する
- 違反すると罰則の対象になり得るため、有給休暇管理簿で取得状況を常に把握しておく