公開日: 2026年9月6日 / 最終更新日: 2026年9月6日
「給与計算を任されたけれど、何から手をつければいいか分からない」——初めて給与計算を担当することになった労務担当者や、従業員を雇い始めたばかりの小規模事業主から、こうした声をよく聞きます。しかし給与計算は「総支給額を計算する→控除額を計算する→差し引いて手取りを出す」という流れの繰り返しです。この記事では、毎月の給与計算の基本的な流れと、押さえておくべき実務のポイントを解説します。
結論を3行で
- 給与計算は「①勤怠集計 → ②総支給額の計算 → ③控除額の計算 → ④差引支給額(手取り)の算出」という4ステップの繰り返し
- 控除には社会保険料・所得税(源泉徴収)・住民税など複数の項目があり、それぞれ計算方法・根拠となる制度が異なる
- 所得税・住民税・年末調整の詳しい計算方法は、それぞれ専用の関連記事で解説しています
給与計算とは?毎月の基本的な流れ
給与計算は、勤怠集計から手取り額の算出までの4ステップで進めます。毎月の給与計算は、大きく分けて次の4つのステップで進みます。
- 勤怠集計(出勤日数・残業時間の確定)
- 総支給額の計算
- 控除額の計算
- 差引支給額(手取り)の算出
このステップは毎月繰り返されるため、一度流れを理解してしまえば、あとは項目ごとの計算方法を覚えていくだけです。以降の章で、②と③の内訳を具体的に見ていきます。
総支給額に含まれるもの
総支給額は、基本給に各種手当と残業代等を加えた金額です。総支給額は、主に次の要素で構成されます。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 基本給 | 雇用契約で定めた固定の給与額 |
| 固定的賃金 | 役職手当・住宅手当・家族手当など、毎月ほぼ一定額が支給される手当 |
| 変動的賃金 | 残業代・深夜手当・休日手当など、その月の勤務実績によって変動する手当 |
残業代等の割増賃金の具体的な計算方法(割増率や1時間あたりの単価の出し方)はテーマとして独立性が高いため、別の関連記事で詳しく解説する予定です。
給与から差し引かれる項目(控除)の全体像
控除には、法律で決まっている「法定控除」と、労使協定に基づく「協定控除」があります。総支給額から差し引く「控除」には、大きく分けて2種類があります。
- 法定控除:社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険など)、所得税(源泉徴収)、住民税(特別徴収)。法律上、控除することが義務付けられている項目です。
- 協定控除:社宅費、労働組合費、財形貯蓄の積立金など。労使協定を結んだ場合にのみ控除できる項目です。
注意
労使協定を結ばずに任意の項目を給与から控除することは、労働基準法第24条(賃金全額払いの原則)に反するおそれがあります。協定控除を行う場合は、事前に労使協定の締結・保管を必ず行ってください。
社会保険料の控除(概要)
社会保険料は、標準報酬月額をもとに決まった金額を毎月控除します。健康保険料・厚生年金保険料は、毎月の給与額そのものではなく、あらかじめ決められた「標準報酬月額」の等級に応じて金額が決まります。雇用保険料は、その月の給与総額に一定の料率を掛けて計算します。
誰が社会保険の加入対象になるか(パート・アルバイトへの適用拡大を含む)といった加入条件の詳細は専門性の高いテーマのため、この記事では扱いません。関連する記事で改めて詳しく解説します。
所得税・住民税の控除(概要と関連記事)
所得税(源泉徴収)と住民税(特別徴収)は、どちらも給与から天引きして納める仕組みです。所得税と住民税は、どちらも従業員本人が直接納付するのではなく、会社が給与から天引きして本人に代わって納付する点が共通しています。ただし、税額の決め方は大きく異なります。
- 所得税(源泉徴収):国税庁が公表する源泉徴収税額表に、社会保険料控除後の給与額と扶養親族の人数を照らし合わせて、会社が毎月の税額を計算します。
- 住民税(特別徴収):前年の所得をもとに市区町村が税額を計算し、会社へ通知します。会社側で税額を計算する必要はなく、通知された金額をそのまま天引きします。
それぞれの具体的な計算方法・実務上の注意点は、以下の関連記事で詳しく解説しています。
給与計算を正確に行うための実務ポイント
締め日・支払日の設定と、計算ミスを防ぐ仕組みづくりが実務のポイントです。給与計算を正確に行うためには、次のような実務上のポイントを押さえておくことが大切です。
- 締め日・支払日を明確にする:就業規則・給与規程で締め日と支払日を定め、勤怠の集計期間と支給のタイミングにズレが生じないようにします。
- 給与計算ソフトを活用する:社会保険料率や税額表は法改正によって毎年のように更新されます。手計算に頼りすぎず、給与計算ソフトを活用すると更新漏れによるミスを防ぎやすくなります。
- 年末調整を忘れずに行う:毎月の源泉徴収はあくまで概算です。年に一度、年末調整で1年分の所得税を精算する必要があります。
よくある質問
Q. 給与計算はExcelでもできますか?
A. 従業員数が少ないうちはExcelでも対応できますが、社会保険料率・税額表の改定への追随や、年末調整の計算まで含めると手間とミスのリスクが大きくなります。従業員数が増えてきたら給与計算ソフトの導入を検討することをおすすめします。
Q. 給与計算を間違えたらどうなりますか?
A. 控除額の間違いは、追加徴収や還付といった形で従業員に負担・不信感を与えるだけでなく、社会保険料や税金の申告・納付額にも影響します。気づいた時点で速やかに従業員へ説明し、次回以降の給与で調整するのが基本的な対応です。
Q. 給与計算の締め日・支払日はいつまでに決めればいいですか?
A. 法律上の期限はありませんが、就業規則・給与規程に明記し、従業員に周知したうえで運用を開始する必要があります。締め日から支払日までの期間が極端に短いと計算ミスが起きやすくなるため、余裕を持った設定をおすすめします。
まとめ
- 給与計算は「勤怠集計→総支給額の計算→控除額の計算→手取りの算出」という4ステップの繰り返し
- 控除には法定控除(社会保険料・所得税・住民税)と協定控除があり、それぞれ根拠・計算方法が異なる
- 所得税・住民税・年末調整の詳細は、それぞれの関連記事で確認できる