公開日: 2026年9月6日 / 最終更新日: 2026年9月6日
「新しく人を雇ったとき、退職者が出たとき、住民税の手続きはどうすればいいのか分からない」——給与計算の担当者がとまどいやすいのが、住民税の特別徴収です。所得税と違い、住民税は会社側で税額を計算する必要がありません。この記事では、特別徴収の仕組みと、入社・退社のタイミングで必要になる手続きを解説します。
結論を3行で
- 特別徴収とは、会社が従業員の住民税を給与から天引きして市区町村に納める制度で、原則すべての事業者に義務付けられている
- 税額は市区町村から届く「特別徴収税額決定通知書」の金額をそのまま毎月天引きするだけで、会社側での税額計算は不要
- 入社・退社のタイミングでは、市区町村への届出(異動届出書等)が必要になる
住民税の特別徴収とは?普通徴収との違い
特別徴収は会社が住民税を天引きする制度で、原則すべての事業者が対象です。住民税の納め方には、「特別徴収」と「普通徴収」の2種類があります。
- 特別徴収:会社が毎月の給与から住民税を天引きし、従業員に代わって市区町村へ納付する方法
- 普通徴収:従業員本人が、市区町村から送られる納税通知書に基づき、年4回に分けて自分で納付する方法
給与の支払者(会社)は、地方税法上、原則としてすべての従業員について特別徴収を行う義務があります。個人事業主の一部を除き、「うちは小規模だから普通徴収でよい」という扱いは認められていない点に注意してください。
特別徴収の年間スケジュール
特別徴収は、6月から翌年5月までの12回払いで天引きします。特別徴収の年税額は、6月から翌年5月までの12か月に分けて、毎月の給与から天引きします。年税額を12等分するため端数が生じることがあり、その端数は初回(6月分)にまとめて反映されるのが一般的です。
会社には、毎年おおむね5月中に、各従業員の市区町村から「特別徴収税額決定通知書」が届きます。この通知書に記載された年税額・月割額をもとに、6月の給与から天引きを開始します。前年の所得をもとに市区町村側が計算した金額がそのまま通知されるため、会社側で税額を計算する必要はありません。
新しく従業員を雇ったときの手続き
前職で特別徴収されていた従業員は、引き継ぎの手続きで特別徴収を継続できます。
- 前職で特別徴収を受けていた場合:本人の希望があれば、「給与所得者異動届出書」を提出することで、前職からの特別徴収をそのまま引き継いで継続できます。
- 新卒採用や、普通徴収から切り替える場合:「特別徴収への切替申請書」等、各市区町村所定の書類を提出することで、普通徴収から特別徴収へ切り替えることができます。
提出先の書式・名称は市区町村によって異なるため、従業員の住民税の納付先(前年1月1日時点の住所地)の市区町村窓口で最新の様式を確認してください。
従業員が退職するときの手続き
退職時期が1月1日〜4月30日か、5月か、6〜12月かで、住民税の扱いが変わります。従業員が退職するときの住民税の扱いは、退職する時期によって次のように異なります。特に1月1日〜4月30日の退職は、本人の希望や同意の有無にかかわらず一括徴収が法律で義務付けられている点に注意が必要です。
| 退職時期 | 扱い |
|---|---|
| 1月1日〜4月30日 | その年5月分までの残りの住民税額を、退職時の最後の給与または退職金から一括で徴収することが法律で義務付けられています(地方税法第321条の5第2項。本人の希望や同意は不要) |
| 5月1日〜5月31日 | もともと5月分(最終月分)しか残っていないため、通常どおり最後の給与から1か月分を天引きするのみです。複数月分をまとめて徴収する「一括徴収」の義務には該当しません |
| 6月〜12月 | 本人の希望により、①普通徴収への切替、②残額の一括徴収、③転職先での特別徴収の継続、のいずれかを選択できます |
注意
退職時には「給与所得者異動届出書」を退職者の住民税の納付先である市区町村へ提出する必要があります。提出期限は多くの自治体で「退職日の翌月10日まで」とされていますが、自治体によって取り扱いが異なる場合があるため、実際の提出先の市区町村窓口で最新の期限を確認してください。
特別徴収でよくあるミス・注意点
届出の期限漏れと、通知書の金額の反映し忘れに注意が必要です。
- 届出の期限漏れ:入社・退社の異動届出書の提出が遅れると、市区町村からの督促や、特別徴収の開始・終了のタイミングがずれる原因になります。
- 通知書の税額をそのまま反映し忘れる:特別徴収税額決定通知書が届いた際、給与計算ソフトや給与台帳への反映を忘れると、誤った金額のまま天引きを続けてしまうことがあります。通知書が届いたら速やかに反映しましょう。
- 複数拠点・自治体をまたぐ場合の対応漏れ:従業員の住所地によって提出先の市区町村が異なるため、拠点が複数ある会社は提出先の管理に注意が必要です。
よくある質問
Q. 従業員が少ない会社でも特別徴収は必須ですか?
A. 原則として、従業員数の多寡にかかわらずすべての事業者に特別徴収の義務があります。「小規模だから普通徴収でよい」という扱いは認められていません。
Q. 住民税額はどうやって決まりますか?
A. 前年(1月〜12月)の所得をもとに、市区町村側が税額を計算し、特別徴収税額決定通知書で会社へ通知します。会社側で計算する必要はありません。
Q. 特別徴収に切り替えられない例外はありますか?
A. 給与の支払回数が少ない一部の事業者や、退職予定が確定している短期雇用者など、限られた例外があります。該当するか不明な場合は、提出先の市区町村窓口に確認してください。
まとめ
- 特別徴収は、原則すべての事業者に義務付けられた住民税の給与天引き制度
- 税額は自治体からの通知書どおりに天引きするだけで、会社側の計算は不要
- 入社・退社のタイミングでは、市区町村への届出(異動届出書等)を忘れずに行う。特に1月1日〜4月30日の退職は一括徴収が法律上の義務になる