公開日: 2026年9月6日 / 最終更新日: 2026年9月6日
「年末調整の時期になると、何から手をつければいいか分からない」「書類が多くて複雑」——多くの労務担当者が毎年悩むのが年末調整です。実は、11月の書類配布から翌年1月の提出まで、決まったスケジュールに沿って進めれば対応できます。この記事では、年末調整の仕組み・必要書類・計算の流れと、令和8年分で押さえておきたい税制改正のポイントを解説します。
結論を3行で
- 年末調整とは、毎月源泉徴収した所得税の合計額と、年間の正しい所得税額との差額を12月の給与で精算する手続き
- 従業員から扶養控除等申告書・保険料控除申告書などの書類を回収し、控除額を反映して再計算する
- 年収2,000万円超の人など対象外となるケースもあり、令和8年分は基礎控除の引き上げなど大きな税制改正がある点に注意
年末調整とは?なぜ必要なのか
年末調整は、毎月の源泉徴収額(概算)と、年間の正しい所得税額との差額を精算する手続きです。毎月の給与から源泉徴収している所得税額は、あくまで「源泉徴収税額表」にあてはめた概算です。実際の1年間の所得税額は、生命保険料控除や配偶者控除など、年の途中では反映しきれない各種控除を加味して初めて確定します。この「概算で徴収した合計額」と「本来の年税額」との差額を、12月の給与で精算するのが年末調整です。
注意(令和8年分の主な税制改正)
令和8年分は、基礎控除の引き上げ(本則62万円。合計所得489万円以下の場合は特例加算により最大104万円)、給与所得控除の最低保障額の引き上げ(65万円→74万円)、扶養親族等の合計所得金額要件の緩和、19歳以上23歳未満の親族を対象とする「特定親族特別控除」の創設など、比較的大きな税制改正が行われています。申告書の様式・記載項目も変更されているため、前年の様式をそのまま使い回さず、その年分の最新の様式・国税庁の案内を必ず確認してください。
実務上は、扶養控除等申告書に記載できる家族の範囲(所得要件)が広がったことで、これまで扶養に入れられなかったパート勤務の配偶者・子どもなどが新たに対象になるケースが出てきます。書類回収の際に「今年は扶養に入れられる家族が増えていないか」を一言添えて確認すると、記載漏れによる後日の修正を減らせます。
年末調整の年間スケジュール
年末調整は、10月下旬の書類配布から翌年1月末の提出まで、約3か月がかりの作業です。
| 時期 | 対応内容 |
|---|---|
| 10月下旬〜11月上旬 | 従業員へ申告書・案内を配布 |
| 11月〜12月上旬 | 従業員が申告書・控除証明書を記入・提出 |
| 11月〜12月中旬 | 会社側で書類回収・内容確認・不備の差し戻し対応 |
| 12月〜翌1月 | 年末調整を反映した給与計算・還付(または追加徴収) |
| 翌年1月31日まで | 法定調書合計表・給与支払報告書を税務署・市区町村へ提出 |
従業員から回収する必要書類
主に4種類の申告書を、従業員から回収します。
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書:扶養家族の情報を申告する書類。年の最初の給与支給日の前日までに提出済みのものを、異動があれば年末に更新します。
- 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書:基礎控除・配偶者控除・所得金額調整控除をまとめて申告する統合様式です。
- 給与所得者の保険料控除申告書:生命保険料控除・地震保険料控除・社会保険料控除(国民年金等)・小規模企業共済等掛金控除を申告する書類です。控除証明書の添付が必要です。
- (該当者のみ)給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書:住宅ローン控除を年末調整で受ける場合(2年目以降)に提出します。
前年から扶養状況等に変更がない従業員については、「前年と異動なし」等と記載する簡易な記載方法が認められる場合があります。詳細は国税庁の案内・記載例で確認してください。
年末調整の計算の流れ
年末調整の計算は、1年間の給与総額の集計から始まる4ステップで進めます。
- 1年間の給与総額の集計
- 給与所得控除後の金額の算出
- 各種所得控除(基礎控除・配偶者控除・保険料控除等)の適用
- 算出所得税額の計算と、源泉徴収済み額との過不足の精算
①〜④の計算は、多くの会社で給与計算ソフトが自動で行いますが、控除証明書の内容や申告書の記載が正しく反映されているかは、担当者による確認が欠かせません。
年末調整の対象者・対象外者
年末時点で在籍している人が対象。年収2,000万円超の人などは対象外です。
| 区分 | 該当例 |
|---|---|
| 対象となる人 | 年末まで1年を通じて勤務している人、年の途中で就職し年末まで勤務している人、年の途中で死亡・障害により退職した人 等 |
| 対象外となる人 | その年の給与収入が2,000万円を超える人、災害減免法により源泉徴収の猶予・還付を受けている人、2か所以上から給与を受けており他社で年末調整済みの人 等 |
対象外となる人は、原則として自分で確定申告を行う必要があります。特に、年の途中で入社した従業員については、前職の給与を含めて年末調整を行う必要があるため、前職の源泉徴収票を必ず回収してください。前職分の提出がないまま年末調整を行うと、後日の再計算が必要になります。
年末調整でよくあるミス・注意点
書類の回収漏れと、控除の適用誤りが実務上のミスになりやすいポイントです。
- 書類の回収漏れ・記入不備:控除証明書の添付漏れや記入ミスがあると、控除が正しく反映されません。提出期限に余裕を持ち、不備があれば早めに差し戻しましょう。
- 控除の適用誤り:扶養親族の所得要件や、配偶者控除・特定親族特別控除の所得要件を誤って適用すると、後日の修正が必要になることがあります。特に税制改正があった年は要件が変わるため注意が必要です。
- 提出期限の管理漏れ:法定調書合計表・給与支払報告書は翌年1月31日までに提出する必要があります。年末調整の計算だけで終わらせず、提出まで含めてスケジュール管理をしましょう。
- 新設・変更された控除の適用漏れ:令和8年分で新設された特定親族特別控除など、その年に変わった制度は担当者自身も見落としやすいポイントです。前年の記入例をそのまま踏襲するのではなく、その年の国税庁の案内で変更点を確認してから書類回収を始めましょう。
よくある質問
Q. 年末調整をしないとどうなりますか?
A. 会社には年末調整を行う義務があり、怠ると加算税・延滞税の対象になるおそれがあります。従業員側も、年末調整で受けられるはずの控除が反映されず、原則として自分で確定申告をする必要が生じます。
Q. 年の途中で退職した人は年末調整の対象になりますか?
A. 原則として対象外ですが、死亡による退職や、著しい心身の障害による退職で年内の再就職が見込まれない場合など、一定の条件を満たす場合は年の途中でも年末調整の対象になります。
Q. 副業をしている従業員の年末調整はどうすればいいですか?
A. 主たる勤務先(扶養控除等申告書を提出している会社)で年末調整を行いますが、副業先の給与は年末調整に含めません。従業員本人が、副業分も含めて確定申告を行う必要があります。
Q. 年の途中で入社した従業員の年末調整はどうすればいいですか?
A. 前職の源泉徴収票を回収し、前職分の給与・徴収税額を含めて年末調整を行います。前職の源泉徴収票が入社時に未提出のまま年末を迎えると、正しい年末調整ができないため、入社時点で提出を依頼しておくと安心です。
まとめ
- 年末調整は、毎月の源泉徴収額(概算)と年間の正しい税額との差額を12月の給与で精算する手続き
- 11月の書類回収から翌1月末の提出まで、決まったスケジュールで進める
- 令和8年分は基礎控除引き上げ(本則62万円、特例加算後最大104万円)など大きな税制改正があるため、最新の様式・要件を必ず確認する