残業時間の上限規制と違反時の罰則(特別条項・猶予業種を含む)

公開日: 2026年9月6日 / 最終更新日: 2026年9月6日

36協定を結んでいれば、どれだけ残業させても問題ないわけではありません。残業時間には、36協定の内容にかかわらず超えてはならない「絶対的な上限」が法律で定められています。この記事では、上限規制の内容、特別条項付き36協定でも守るべき上限、猶予期間が終了した業種の扱い、違反時の罰則について解説します。

結論を3行で

  • 残業時間の上限は原則月45時間・年360時間で、これは罰則付きの法規制
  • 特別条項付き36協定でも、年720時間・単月100時間未満・複数月平均80時間以内などの絶対的な上限がある
  • 建設業・自動車運転者・医師等は2024年4月から上限規制が適用されており、違反すれば罰則の対象になる

上限規制の原則(月45時間・年360時間)

残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間です。2019年4月(中小企業は2020年4月)に施行された働き方改革関連法により、残業時間の上限は、それまでの行政指導レベルの「目安」から、罰則付きの法規制へと格上げされました。原則となる上限は次のとおりです。

  • 時間外労働: 月45時間以内・年360時間以内
  • 1年単位の変形労働時間制を採用している場合: 月42時間以内・年320時間以内

この上限は、36協定で定める延長時間そのものの上限でもあります。つまり、36協定にどれだけ長い時間を書いても、原則としてこの範囲でしか協定を結べません。この範囲を超えて残業させる必要がある場合に用いるのが、次章で説明する特別条項です(根拠: 労働基準法36条・e-Gov法令検索、詳しい解説は厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」)。

特別条項付き36協定における上限

特別条項でも、超えてはならない上限が別途定められています。特別条項付き36協定を締結すれば、臨時的な特別の事情がある月に限り、月45時間・年360時間の原則を超えて残業させることができます。ただし、その場合でも次の上限は必ず守る必要があります。

項目 上限
時間外労働の年間合計 720時間以内(休日労働は含まない)
時間外労働+休日労働の単月合計 100時間未満
時間外労働+休日労働の複数月平均 2〜6か月平均のいずれでみても80時間以内
月45時間を超えられる回数 年6回まで

これらは特別条項付き36協定を結んでいても超えることが許されない「絶対的な上限」です。36協定の届出内容の範囲内であっても、実際の労働時間がこの上限を超えれば労働基準法違反になります。

猶予期間が終了した業種の取り扱い

建設業・自動車運転者・医師等は2024年4月から規制が適用されています。上限規制の施行時点(2019年4月・中小企業2020年4月)では、業務の特性上ただちに対応することが難しいとして、一部の業種・業務に5年間の適用猶予が設けられていました。この猶予期間は2024年3月末で終了し、2024年4月から次の業種にも上限規制が適用されています。

  • 建設事業: 上限規制が全面的に適用。ただし、災害の復旧・復興の事業については、単月100時間未満・複数月平均80時間以内の規制は適用されない特例がある
  • 自動車運転の業務: 特別条項の上限が年960時間となる(一般則の年720時間より緩和)。単月100時間未満・複数月平均80時間以内の規制、月45時間を超えられるのは年6回まで、という規制は適用されない特例がある
  • 医師: 原則として年960時間(A水準)。地域医療の確保等のためにやむを得ない場合の特例水準(B水準・連携B水準)や、集中的に技能を向上させる必要がある場合の特例水準(C水準)では、都道府県知事の指定を受けることで年1,860時間まで認められる場合がある
  • 鹿児島県および沖縄県における砂糖製造業: 猶予は終了し、一般則が適用される

建設業については、厚生労働省が事業者向けの専用ポータルサイトを設けており、業種特有の論点(下請け・重層構造での労働時間管理等)を解説しています。詳しくは厚生労働省「建設業にも時間外労働の上限規制が適用されています」を参照してください。自動車運転者・医師を含む猶予業種全体の概要は、厚生労働省「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制」にまとまっています。

注意

猶予対象だった業種は、それぞれ細部の取り扱い(適用除外項目、必要な指定手続き等)が一般則と異なります。該当する事業を営んでいる場合は、自社に適用される上限の内容を個別に確認してください。

上限規制に違反した場合の罰則

上限規制への違反は、罰則の対象になります。時間外労働の上限規制(月45時間・年360時間、特別条項の場合の年720時間・単月100時間未満・複数月平均80時間以内等)に違反した場合、労働基準法119条により、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象になり得ます。36協定自体を締結・届出せずに残業させた場合も同様です。

この罰則は、違反行為を行った事業主や責任者個人だけでなく、法人自体にも科される「両罰規定」の対象です。実務上は、いきなり罰則が適用されるのではなく、労働基準監督署の調査(臨検)を経て是正勧告が行われ、それでも改善が見られない場合や悪質と判断された場合に、書類送検や企業名の公表に至るケースが一般的です。是正勧告を受けた場合は、期限内に是正報告書を提出し、再発防止策(勤怠管理の見直し、36協定の再締結等)を示すことが基本的な対応になります。

上限規制を守るための実務対応

上限規制を守るには、勤怠管理と協定内容の定期的な照合が欠かせません。上限規制に違反しないためには、次のような実務対応が有効です。

  • タイムカード、ICカード、パソコンのログ等、客観的な方法で労働時間を記録・管理する
  • 36協定で届け出た内容(通常の上限か特別条項付きか、延長時間)と、実際の残業実態を月次で照合する
  • 特別条項を使う場合は、発動回数(年6回まで)や単月・複数月平均の時間数をリアルタイムに近い形でモニタリングする
  • 36協定の有効期限を管理し、更新のタイミングを見落とさない
  • 特定の部署・時期に恒常的な長時間労働が発生している場合は、特別条項での対応に頼らず、業務量や人員体制そのものの見直しを検討する

よくある質問

Q. 36協定の届出範囲内であれば、上限規制には違反しませんか?
A. いいえ、それだけでは安全とは言えません。36協定で定めた延長時間の範囲内であっても、単月100時間未満・複数月平均80時間以内といった絶対的な上限を超えれば、上限規制違反になります。36協定の届出内容と、法律上の絶対的な上限は別のものとして両方を確認する必要があります。
Q. 上限規制は管理監督者にも適用されますか?
A. 労働基準法上の管理監督者は、労働時間・休憩・休日に関する規定の適用が除外されるため、上限規制の対象にはなりません。ただし、管理監督者であっても、長時間労働による健康リスクは変わらないため、企業には安全配慮義務の観点から労働時間の把握・管理が求められます。

まとめ

  • 残業時間の上限は原則月45時間・年360時間で、罰則付きの法規制になっている
  • 特別条項付き36協定でも、年720時間・単月100時間未満・複数月平均80時間以内などの絶対的な上限を超えることはできない
  • 建設業・自動車運転者・医師等は2024年4月から規制が適用されており、違反すれば懲役・罰金の対象になり得る