有給休暇中の給与はいくら?3つの賃金計算方法と実務の注意点

公開日: 2026年9月6日 / 最終更新日: 2026年9月6日

「有給休暇を取った日の給与は、普段と同じ額でいいの?」「パートの時給制の場合はどう計算する?」——有給休暇を取得した日の賃金には、法律上3つの計算方法があり、会社はそのいずれかをあらかじめ就業規則で定めておく必要があります。この記事では、3つの計算方法の違いと、実務での注意点を解説します(有給休暇そのものの基本ルールは年次有給休暇は何日もらえる?付与日数の数え方と注意点を解説で解説しています)。

結論を3行で

  • 有給休暇中の賃金は「通常の賃金」「平均賃金」「標準報酬日額」の3方式のいずれかで計算し、就業規則に明記しておく必要がある。
  • 最も一般的なのは、出勤したものとして通常どおり計算する「通常の賃金」方式。
  • 標準報酬日額を使う場合は労使協定の締結が必要で、社会保険料の算定基礎とのズレが生じやすいため注意が必要。

3つの計算方法の概要

労働基準法(e-Gov法令検索)上、有給休暇を取得した日に支払う賃金は、次の3方式のいずれかから会社が選び、就業規則に定めておく必要があります。

  • 通常の賃金: その日、通常どおり働いたものとして計算する方法(最も一般的)
  • 平均賃金: 直近3か月の賃金総額をもとに算出した平均額で支払う方法
  • 標準報酬日額: 健康保険の標準報酬月額の30分の1相当額で支払う方法(労使協定が必要)

どの方式を選ぶかは会社の任意ですが、いったん就業規則で定めた方式は、従業員全体に一律に適用するのが原則です。従業員ごと・取得日ごとに会社が有利な方式を都度選ぶことはできません。

方式1: 通常の賃金を支払う方法

最も広く使われている方法です。月給制であれば、有給休暇を取得しても給与額は変わりません(欠勤控除の対象にしない)。日給制・時給制の場合は、所定労働時間分を通常の時給・日給で計算します。給与計算の手間が少なく、従業員にとっても「休んでも給与は普段どおり」というわかりやすさがあるため、多くの中小企業で採用されています。

方式2: 平均賃金で支払う方法

労働基準法上の「平均賃金」(算定事由発生日以前3か月間に支払われた賃金総額 ÷ その3か月間の暦日数)で計算する方法です。残業や歩合給の変動が大きい従業員がいる会社では、直近の稼働実態を反映しやすい一方、月によって金額が変動するため給与計算がやや複雑になります。

方式3: 標準報酬日額で支払う方法

健康保険の標準報酬月額を30で割った「標準報酬日額」で支払う方法です。金額が固定されるため計算はシンプルですが、労使協定の締結が必須である点が他の2方式と異なります。また社会保険上の標準報酬月額と、実際の賃金水準にズレが生じている場合、支給額が実態と合わなくなることがあるため、標準報酬月額を毎年きちんと見直している会社向けの方式といえます。

パート・アルバイト(時給制)の場合

時給制のパート・アルバイトも、上記いずれかの方式で計算します。実務上は「通常の賃金」方式(その日のシフトで働いたと仮定した時間 × 時給)が最もシンプルでよく使われます。シフトが日によって異なる場合は、就業規則や勤務実態に基づき、標準的な所定労働時間を定めておくと計算がぶれません。比例付与の対象になる場合の日数の考え方は有給休暇の比例付与とは?パート・アルバイトの日数早見表を参照してください。

計算時の注意点

  • 「通常の賃金」方式では、皆勤手当・精勤手当のように出勤実績に連動する手当を、有給取得日についてどう扱うかを就業規則で明確にしておく
  • 残業代・深夜割増は、有給休暇を取得した日には発生しない(実際に労働していないため)
  • 方式を変更する場合は就業規則の変更が必要で、変更のタイミング・周知方法にも注意する

注意

就業規則に計算方法の定めがないまま運用している会社も見られますが、本来は必須の記載事項です。曖昧なまま担当者の裁量で計算していると、退職時の未払い賃金トラブル等につながりやすいため、早めに明文化しておくことをおすすめします。

賞与・社会保険料への影響

有給休暇を取得した日は「出勤した」扱いになるため、賞与算定における出勤率・皆勤の判定において、欠勤日として不利に扱うことはできません。また、社会保険料(健康保険・厚生年金)は月額の標準報酬月額に基づいて決まる仕組みのため、有給休暇を取得したこと自体によって当月の社会保険料が変動することは基本的にありません(著しい欠勤等で報酬が大きく下がった場合の随時改定とは別の話です)。

遅刻・早退と組み合わせた場合の考え方

半日単位の有給休暇制度がある会社では、遅刻・早退の時間を有給休暇で充当したいという相談も多く寄せられます。これは法律上の義務ではなく、就業規則や運用ルールで会社が決められる範囲です。認める場合は、充当できる単位(30分単位・1時間単位等)や、充当を申請できるタイミング(事前申請のみ可とする等)を就業規則にあらかじめ明記しておくと、現場での判断のばらつきを防げます。

よくある質問

Q. どの方式を選ぶかは会社が自由に決められますか?
A. 3方式のうちどれを採用するかは会社の判断で決められますが、標準報酬日額を使う場合のみ労使協定の締結が必要です。決めた方式は就業規則に明記します。
Q. 計算方式を途中で変更することはできますか?
A. 就業規則の変更手続きを経れば可能です。ただし従業員に不利益な変更となる場合は、変更の必要性や周知・説明を尽くすなど、より慎重な対応が求められます。
Q. 欠勤が多い月の平均賃金はどう計算しますか?
A. 平均賃金には最低保証額の規定があり、単純に賃金総額を暦日数で割った額が著しく低くなる場合には、労働日数を基準にした最低保証額と比較して高い方を用います。

まとめ

  • 有給休暇中の賃金は「通常の賃金」「平均賃金」「標準報酬日額」のいずれかで計算し、就業規則に明記する
  • 最も一般的なのは通常どおり働いたものとして計算する「通常の賃金」方式
  • 標準報酬日額を使う場合は労使協定が必須で、社会保険の標準報酬月額とのズレに注意する